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“うまから”ニュース

2023.04.19
[体調悪くて当たり前]素朴版テキスト<はじめに>
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はじめに 体調が常に万全な人はいません。もし、この1年ずっと体調が万全だったという人がいたら、私はその人の弟子になりたいくらいです。私自身も1年のうち100日ぐらいはどこかしら体調が悪いし、そのうち10日くらいは深刻に体調が悪いです。ただ、病気かというと病気ではないという認識もあります。おそらく皆さんもそうなのではないでしょうか。多くの人は知らず知らずのうちに自分自身の体調不良と一定の距離感で、うまく付き合っているのです。 しかしながら、世の中には体調不良が生活に深刻な影響を及ぼしている人たちがいます。例えば、1年のほとんどの日々をベッドの上でしか過ごせないという人がいます。また、しばしば体調が悪くなるために会社から白い目で見られる人もいます。もちろん病気で体調が悪い人も少なからずいます。 私は都内の病院で30年以上、内科医として勤めていますが、患者さんが抱える様々な体調不良の原因となる病気を診断し、適切な治療をするのが仕事だと思っています。統計的な話になりますが、何らかの体調不良がある人のうち、原因を一元的に説明できるような病気がある割合は1割から2割程度と言われていて、経験上もそのくらいだと感じています。逆を返せば、体調不良の人の中で、これが原因だと説明できる病気がある人は、実は圧倒的に少なくて、「病気ではないけれど体調が悪い」という場合がとても多いのです。とはいえ、隠れている病気を治すことで体調が良くなる場合もあるので、体調不良で長い間悩んでいる人は、やはり一度医師の見立てを受けることをお勧めします。 では、原因となる病気が見つからなかったとき、医者が体調を治してくれることはほとんどないということになります。私自身、病気が見つからないままつらい思いをしている人に毎日のように出会いますし、内科医として、日々悩みながら工夫をしているのですが限界はあります。しかし一方で、臨床経験を通して、それなりにはつらつと生きるお手伝いをできる経験値が随分上がっているとも考えています。 この本は、私が内科医として体調不良を抱える人たちのお手伝いをする中で培ってきたノウハウや、科学的根拠が見出されているものをまとめたものです。体調不良で悩んでいる多くの人たちが、今よりもう少しはつらつと人生を過ごせるようにという願いで、この本を書きたいと思います。体調不良や病気が社会の中でどのように位置づけられているのか、人はどう認識しているのか、という分析から始めながら、もし自分が体調不良を患ったり、病気を抱えながら生活することになったりしたときに、どのように向き合い、具体的にどういうことを生活に取り入れればいいのかという、助言的な示唆をできればと思っています。本書では、とてもフワッとした哲学的な考察から具体的なノウハウまで、知識としての体調不良や病気への向き合い方のノウハウを紹介しますので、どこから読んでもそれなりにご自身の生活に取り入れられることが書かれているよう工夫してみました。ぜひお時間のあるときに読んでいただければと思います。

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